AI を入れると決めたあと、最初の1か月をどう使うかで結果がほぼ決まります。 この時期にやることは1つだけです。業務を1つ選び、それだけを4週間やり切る。 広げるのは、そのあとです。
1か月目に、対象を増やしてはいけない
最も多いのは、全社にアカウントを配って「まずは各自で使ってみてください」と始める形です。 動き出しは速いのですが、1か月後にはほぼ必ず「うちの業務には合わなかった」という 結論だけが残ります。
使う人と使わない人に分かれ、使わなかった人にとっては「試したが要らなかったもの」になるからです。 一度そう結論が出ると、次に提案しても通りません。 技術の問題ではなく、社内での評価が先に固まってしまうという問題です。
選ぶのは「毎週必ず発生する、面倒な作業」を1つ
対象を選ぶ基準は3つです。
- 毎週必ず発生すること。月1回の業務では、4週間で3回しか試せません。慣れる前に1か月が終わります
- 文章を読む、書く、まとめる作業であること。現時点で最も差が出る領域です
- 間違えても取り返しがつくこと。請求や契約のように、誤りがそのまま損害になる業務から始めない
この3つを満たす業務は、多くの会社で似ています。営業日報、議事録、問い合わせへの一次返信、 提案書のたたき台。派手さはありませんが、毎週発生していて、しかも誰もやりたがらない作業です。
4週間の使い方
週ごとにやることを決めておくと、途中で立ち消えになりません。
- 第1週:1人が実際にやる。「誰がやるか決める」で1週間を使わないこと。決めた日に手を動かします
- 第2週:手順を書き出す。どう指示したらうまくいったかを、そのまま文章で残します
- 第3週:別の人が、その手順でやる。ここで初めて、個人技かどうかが分かります
- 第4週:やめる判断も含めて振り返る。続ける/変える/やめる、のどれかを決めます
重要なのは第3週です。1人がうまく使えている状態は、まだ導入ではありません。 手順が他人に渡って初めて、業務として残ります。
1か月後に見るのは、削減できた時間ではありません
「何時間浮いたか」は測りにくいうえに、説得力を持ちません。 もともと何時間かかっていたかを、誰も正確には記録していないからです。
代わりに見るのは、担当者が「来月も同じやり方で続けたい」と言うかどうかです。 続けたいと言われた業務だけが定着します。逆に、数字上は速くなっていても 「元のやり方に戻したい」と言われたなら、その業務は選び方を間違えています。
1か月目に、やらないこと
逆に、この時期に手を出さないほうがよいものもあります。
- ツールの比較検討に時間を使わない。使う前の比較は資料の比較にしかなりません。 自社の業務で合うかどうかは、1つ選んで4週間使ってみないと分かりません
- 全社研修をしない。使う場面が決まっていない段階の研修は、 その日のうちに忘れられます。研修は、定着した業務ができてから、その手順を教える形にします
- 詳細な社内規程づくりを先行させない。運用が固まる前に作った規程は、 守られないか、実務の邪魔になるかのどちらかです
ただし、規程のうち1点だけは初日に決めてください。「入れてはいけない情報」です。 顧客の個人情報、取引先から預かった資料、未公開の数字。 これを1枚に書いて共有するところまでは、初日にやります。 ここだけは、後から取り返しがつきません。
広げるのは2か月目から
1つ定着すると、社内の会話が「使えるのか」から「次はどこでやるか」に変わります。 この変化が起きてから広げると、抵抗がほとんどありません。 最初の1か月は、その変化をつくるための時間だと考えてください。
どの業務から始めるべきかは、業種や組織の形によって変わります。 AI 導入支援では、この選定から手順化まで一緒に進めています。 ご相談は無料です。