1. ホーム
  2. お知らせ

海外進出、市場を選ぶ前に整理しておく3つの論点

自社から3つの論点を順に通し、候補となる市場が一つに絞り込まれる様子を表した図

海外進出のご相談で最も多いのが「どの国から始めるべきか」という問いです。 ただ、市場を選ぶ前に決めておくべきことが3つあります。 ここが曖昧なまま国を選ぶと、進出すること自体が目的になり、 撤退の判断もできなくなります。 順番に整理していきます。

その前に — 「なぜ海外なのか」を一度言葉にする

国内市場の縮小、円安、取引先からの要請。きっかけは様々ですが、 「国内が厳しいから海外へ」という理由だけで進出した場合、うまくいくことは稀です。 国内で売れないものが海外で売れる理由は、通常ありません。

逆に、成果が出ている企業には共通点があります。自社の製品やサービスが 「どういう条件が揃った市場でなら評価されるのか」を言葉にできていることです。 品質なのか、価格なのか、納期なのか、それとも日本製であること自体なのか。 この答えが、そのまま市場選定の基準になります。

1. 誰に売るのか — 最終顧客か、取引先か

最初の分岐点です。現地の消費者に直接売るのか、現地の企業に売るのか、 あるいは現地に進出している日本企業に売るのか。 この3つは、必要になる体制がまったく異なります。

消費者向けであれば、現地の嗜好・言語・決済・物流をすべて整える必要があります。 一方、現地企業への B2B で必要になるのは、技術的な説明ができる人材と、 継続的に商談を進められる関係です。前者は仕組み、後者は人。投資の性格が違います。

「まず現地の展示会に出てみる」という判断が空振りに終わるのは、 この整理を飛ばしているときです。 誰に会いたいのかが決まっていなければ、名刺は集まっても商談にはつながりません。

2. どこまで自社でやるのか — 直販か、パートナーか

代理店に任せるのか、自社で直接売るのか。越境ECで試すのか、現地に人を置くのか。 この判断は「どちらが優れているか」ではなく、 「現地の情報をどこまで自社に残したいか」で決まります。

代理店に任せると立ち上がりは早くなります。ただし 顧客がなぜ買ったのか、なぜ買わなかったのかという情報は入ってきません。 数年後に契約を見直そうとしたとき、自社には何も蓄積されていない、ということが起こります。

直販は手間がかかりますが、情報は自社に残ります。 小さく始めて情報を取り、判断材料が揃ってから広げる。 遠回りに見えて、結果的に速いのはこちらです。

3. いつ辞めるのか — 撤退の条件を先に決める

最も飛ばされやすく、最も重要な論点です。 始める前に「何がどうなったら撤退するか」を決めておいてください。

決めていない場合、ほぼ確実に「もう少し続ければ」という判断が繰り返されます。 既に使った費用が惜しくなり、判断が先送りされる。 これは意志の弱さではなく、人間の判断が持つ性質です。 だからこそ、冷静なうちに条件を決めておく必要があります。

条件は精緻な数値でなくても構いません。 「2年目までに継続取引先が3社できなければ方式を変える」 「担当者1人で回せない状態が半年続いたら縮小する」—— この程度でも、判断の拠り所としては十分に機能します。

市場を選ぶのは、この3つが決まってから

誰に売るか、どこまで自社でやるか、いつ辞めるか。 これらが決まると、候補となる国は自然に絞られていきます。

消費者向けに直販し、情報を自社に貯めたいのであれば、 物流と決済が整っている市場が候補になります。 B2B でパートナーと組むのであれば、 その分野の企業が集まっている地域が優先されます。

市場の魅力度だけで選ぶと、自社の体制と噛み合いません。 「成長率が高い国」は、同時に競争も激しく、参入にかかる費用も高い市場です。 自社が勝てる条件から逆算するほうが確実です。

最後に — 海外で問われるのは、国内の総和です

ここから書くことは、当方が事業会社で海外部門の責任者を務めていた立場で、 よく起こったことです。 俯瞰した立場にいたからこそ、よく見えていました。 海外で成果が出ない理由の多くは、実のところ市場の選び方ではありません。

出発点にあるのは、たいてい2つの前提です。 「日本で売れているのだから、海外でも売れるだろう」。 そして「品質は日本が一番だろう」。 この2つを疑わないまま出ていくと、現地で何が起きているのかが見えなくなります。

海外市場では、社内のバリューチェーンの総和が、そのまま露骨に現れます。 開発、生産、品質、物流、営業——どこか一つでも外部環境を見ずに動いている部門があれば、 その弱さは現地で必ず表面化します。国内では商習慣や既存の関係が緩衝材になりますが、 海外にその緩衝材はありません。

とりわけ問題になるのが、重要な機能部門の責任者が属人的に決まっている場合です。 社内での経緯や年次で選ばれた人が、外部環境を参照する習慣を持たないまま判断を続ける。 サプライチェーン全体を競合とベンチマークすれば、 そもそも戦える土壌にないことが分かるはずなのに、その比較自体が行われていません。

そして、その責任は海外部門に向かいます

結果が出なければ、責任を問われるのは海外部門です。 本当の原因が国内にあっても、そこは議論の対象になりません。 そして、ここから先は静かに進みます。

対応の遅さや品質のばらつきに現地の顧客が離れていく。 一度失った信頼は戻らず、それはブランドという資産が目減りしていくことと同じです。 説明のつかない状況に置かれた担当者から辞めていき、 蓄積された現地の知見も一緒に消えます。

そして経営トップが、この一連の流れを認識していないことが、往々にしてあります。 自らの弱さを振り返らない。責任を取らない。真実から目を背ける。 認識していないのではなく、認識しようとしていない——そちらのほうが実態に近い場面を、何度も見てきました。

出るべきかどうかの、本当の判断基準

3C の把握、競合とのベンチマーク、顧客を満足させるという当たり前のこと。 これらがことごとく欠けている状態であれば、海外展開はしないほうがよい—— というのが、当方の率直な見解です。

必要なのは「気持ちで負けない」「やり切る」といった話ではありません。 海外攻略の要点は、精神論ではなく内部変革です。 国内で整っていないものが、海外で整うことはありません。

厳しい言い方になりましたが、これは特定の企業を指したものではありません。 むしろ、この構造に気づいている経営者の方であれば、勝ち筋は十分にあります。 気づいているかどうかが、そのまま差になる領域です。


当方では、この3つの論点を整理するところから海外進出のご相談をお受けしています。 進出そのものをお勧めすることはありません。 整理した結果「今は国内に集中すべき」という結論になることもあり、 それも一つの成果だと考えています。

市場の選定、販路の設計、実際の営業活動まで、机上の計画で終わらせずに伴走します。 詳しくは海外進出支援・海外営業代行をご覧ください。

← お知らせ一覧へ戻る ご相談はこちら →

Contact

まずは、お話を聞かせてください。

現状の課題整理から、無料でご相談いただけます。内容が固まっていない段階でも構いません。